動画の「セーフティゾーン」はなぜ必要なの?テロップ配置時の推奨値

「アクションセーフ」と「タイトルセーフ」

動画における「セーフティゾーン(セーフエリア)」とは、動画を 異なる表示機器で再生した場合でも、視聴者が確実に目にできる映像の範囲を指します。

動画にテロップを配置する際は、決められた「セーフティゾーン」の範囲から ハミ出さないように注意する必要があります。2022年現在は、以下のマージンが当ブログの推奨値です。

MEMO

セーフティゾーンと同じ意味で使われる言葉としては「セーフマージン(Adobeアプリ)」「セーフティエリア」などがあります。

YouTube用の動画
  • アクションセーフ:画面の97.5%以内
  • タイトルセーフ:画面の95%以内 ※テロップはこの範囲内
  • 動画の冒頭3秒間は「画面下部 17%」には重要な情報を置かない
  • 冒頭3秒以外でも「画面下部 17%」には できるだけ重要な情報を置かないよう考慮する※ただしそこまで神経質になる必要はない
テレビ放送用の動画(ARIB TR-B4)
  • アクションセーフ:画面の97.5%以内
  • タイトルセーフ:画面の95%以内 ※テロップはこの範囲内
管理人より
上記はあくまで推奨値です。テレビ放送用の動画のセーフティゾーンは、動画編集者が勝手に決められるものではありません。放送局によって範囲が異なるため、テロップを作成する前に、プロデューサーなどに確認するようにしましょう。

「セーフティゾーン」が必要な理由

テレビは映像の一部を表示しない(場合がある)

なぜこうした範囲が設けられているかというと、家庭用テレビのモニタは、機種やモードによって 映像の外周部分を数%程度 隠して表示する場合があるからです(オーバースキャン表示)。

このため、セーフティゾーンを意識せずにテロップを配置してしまうと、表示機器によっては 大事な情報が見えない/一部しか表示されない可能性があります。

テレビモニタで表示されることが前提の動画(テレビ番組やCMなど)を作成する場合は 特に「セーフティゾーン」を意識する必要があります。

MEMO

フルスキャンモードに対応したテレビモニタでも、出荷時の初期設定がオーバースキャンモードのケースもあるため、現在でも「セーフティゾーン」が必要になっています。

スマホ・PCモニタは100%表示だけど…
「テレビで再生」モード

一方、スマホやPCモニタの画面は100%表示が基本なので、YouTubeでの視聴のみを前提にした動画であれば 本来は「セーフティゾーン」は 気にする必要はありません。

しかし、最近では YouTubeの視聴モードのひとつに「テレビで再生」が加わわるなど、WEB動画を家庭のテレビで鑑賞するケースも増えています。

また、WEB用に作成した動画を 後からテレビ放送するケースも考えられるため、特に理由がない限りはYouTube動画であっても「セーフティゾーン」内でレイアウトを行うのがおすすめです。

管理人より
演出的に「ワザと文字をはみ出させたい」という場合は、セーフティゾーンを超えても問題ありません。あくまでも「確実に読ませたい情報はここにおさめようね」というお話です

「アクションセーフ」と「タイトルセーフ」

「アクションセーフ」と「タイトルセーフ」

セーフティゾーンには、「アクションセーフ」と「タイトルセーフ」の2つが設けられています。

外側の線が「アクションセーフ(情報範囲)」です。ここより外側の映像は表示機器によっては隠れてしまう可能性があります。確実に見せたい情報はこのタイトルセーフの範囲内に入るように作成します。

内側の線が「タイトルセーフ(重要情報範囲)」です。テロップなどの文字情報はこの範囲に入れます。

「確実に表示できるならアクションセーフだけでよくない?」と思いますが、これは(かつてのブラウン管の時代の)テレビモニタの特性として、周辺部ほど表示性能が落ちる(文字が読みにくくなる)傾向があったため。

現在も 一応 ブラウン管テレビで視聴する人もいることを考慮して 2つのセーフエリアが設けられています。

他にもこんな呼び方が…
  • アクションセーフ:テレビフレーム(テレフレ)、オーバースキャン、情報範囲 など
  • タイトルセーフ:タイトル安全フレーム、重要情報範囲 など

「セーフティゾーン」の推奨値

テレビ放送用の動画

テレビ番組やCMなど、放送向け動画の場合は 一般社団法人 電波産業会(ARIB)という組織が、セーフティゾーンの推奨値を策定しています。

今でもブラウン管モニタで視聴する世帯が残存することを考慮し、2021年現在は 以下の新旧2つの基準が併存している状況です。どちらの範囲で作成するかは、事前にプロデューサーなどに確認しましょう(※いずれもHD、4K、8K 共通)。

「旧基準」のセーフティゾーン
セーフティゾーン旧基準

「アクションセーフ:93%、タイトルセーフ:90%」で、ブラウン管モニタに配慮したものです。

ARIBでは「ブラウン管モニタの出荷終了から10年+αが経過した 2017年あたりを目安に 新基準に移行しましょう」と目標を提示しているため(強制力はない)今後は使用されなくなる可能性があります。

「新基準」のセーフティゾーン
セーフティゾーン新基準

「アクションセーフ:97.5%、タイトルセーフ:95%」です。現在は 多くのテレビ番組で こちらの新基準が採用されています。

MEMO

上の基準はARIBの定める「アスペクト比16:9のテレビジョン放送番組の制作時におけるセーフティゾーンについてのガイドライン(ARIB TR-B4 ver3.0)」に準じたもので「旧基準 = セーフティゾーン」「新基準 = ターゲットセーフティゾーン」に対応しています。

YouTube用の動画

セーフティゾーンYouTube
基本は「アクション:97.5% / タイトル:95%」

本来 YouTubeには、明確なセーフティゾーンの規定はありません。

しかし最近では、視聴モードのひとつに「テレビで再生」が加わったこともあり、YouTube動画を家庭のテレビで鑑賞するケースも増えています。そのため 基本的にはテレビ放送の基準に即した「アクションセーフ:97.5% / タイトルセーフ:95%」が推奨値となります。

オーバーレイ回避は 可能な範囲で

また、YouTubeの場合、視聴環境によっては、ツールバーが 動画の一部を隠してしまいます(オーバーレイ表示)。動画が隠れる割合は視聴環境により様々ですが、当ブログでは検証の結果「画面下部 17%」の範囲を、 オーバーレイの可能性が高いエリアの目安としています(検証記事はコチラ)。

ヘッダ:Youtubeオーバーレイ検証
YouTube用 セーフティゾーンのまとめ
  • アクションセーフ:画面の97.5%以内
  • タイトルセーフ:画面の95%以内 ※テロップはこの範囲内
  • 動画の冒頭3秒間は「画面下部 17%」には重要な情報を置かない
  • 冒頭3秒以外でも「画面下部 17%」には できるだけ重要な情報を置かないよう考慮する※ただしそこまで神経質になる必要はない
管理人より
ツールバーのオーバーレイ表示は、動画視聴時に頻繁に起こるものではないため、厳密に適用する必要はありません。「できれば避けた方がよい/念のために避けた方がよい 範囲」くらいに考えてよいかと思います。

「セーフティゾーン」の設定方法(アプリ別)

PremierePro

Adobeアプリではセーフティゾーンを「セーフマージン」と呼称しています。モニタ画面上で「右クリック >セーフマージン」で表示/非表示を切り替えます。

Premiereセーフマージン表示

エリアの範囲を調整するには「ファイル > プロジェクト設定 > 一般」を選択し、「一般」タブ下部の「アクションおよびタイトルセーフエリア」部分に直接数値を打ち込みます

Premiereセーフマージン調整
  • タイトルセーフエリア:5%横|5%縦
  • アクションセーフエリア:3%横|3%縦

※本来「タイトルセーフエリア」は2.5%にすべきですが、Premiere2020では小数点以下が切り捨てられる仕様になっているため このようにしています。

AfterEffects

モニタ画面下のアイコンをクリックし「タイトル/アクションセーフ」をクリックすると、表示/非表示できます。

AfterEffectsセーフマージン表示

「編集 > 環境設定 > グリッド&ガイド」で、数値の調整ができます。

AfterEffectsセーフマージン調整
  • アクションセーフ:2.5%
  • タイトルセーフ:5%

Photoshop / Illustrator

PhotoshopやIllustratorで、ビデオ系テンプレートを選択すると、あらかじめセーフエリアらしきガイドが表示されます。

PhotoshopとIllustrator

しかしこちらは「アクションセーフ:90% / タイトルセーフ:80%」という、かなり昔の数値が採用されており、正直いって使い物になりません。※幅の調整もできません

当ブログでは、ARIBの基準に合わせてセーフティゾーンが作成できるPhotoshop用アクションを配布していますので、そちらを活用してみてください。

ヘッダ画像:アクション配布

「セーフティゾーン」の歴史【おまけ】

そもそも このような「セーフティゾーン」が設定された背景には、かつての家庭用テレビモニタの技術的な制約がありました。

1990年代まで主流であったブラウン管テレビは、画面の周辺部の動画像が歪んでしまう特性を持っており、この部分を隠して中心部だけを表示する形状になっていました。

しかも、実際に視聴できる表示範囲はメーカーや機種間でバラツキがあったため、どの機器でも確実に表示される範囲として「セーフエリア」が必要とされたわけです。ちなみに当時のセーフエリアは「アクションセーフ:90%、タイトルセーフ:80%」というものでした。

現在 一般的な液晶テレビでは、周辺部の歪みは発生しません。また画面を100%表示できる「フルスキャンモード Dot by Dot」を持つ機種も多く、実は「セーフティエリア」という概念は そもそも必要がなくなりつつあります。

現在も、セーフティエリアが設定されている理由はいくつかあります。

  • ブラウン管型テレビでの視聴を続けている世帯に配慮 ※CRT型の最終出荷は2004年末頃
  • 「オーバースキャンモード ※95%程度の部分だけ表示される」を初期設定として出荷されたテレビがある など

しかし、いずれも近い将来 解消されるものと思われ、それに合わせて「セーフエリア」という概念もなくなるものと思われます。

参考文献

ARIB TR-B4 3.0版「アスペクト比16:9の画面における セーフティゾーン」
JPPA『ポストプロダクション技術マニュアル』第8版 p146.147

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