「テロップ」とは?言葉の意味と役割を理解して動画の印象をUPしよう!

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「テロップ」は、もともと 動画に文字を投影する装置(機械)の名称でしたが、現在の日本では「動画内に差し込まれる文字」を指す言葉として定着しています。

テロップ技術の発展は、動画の演出法にも画期的な変革をもたらしました。現在では「テロップ」の出来が、動画の印象を大きく左右する要素のひとつになっています。

この記事では、動画編集における「テロップ」の簡単な歴史と、その役割についてまとめています。

「テロップ」とは:語源と歴史

「テロップ」という言葉は、もともと、テレビの画面に文字や写真などを映し出すための装置の名前でした。

この装置はテレビの黎明期(1940年代)にアメリカのグレイ社が開発したもので、正式名称の「Television Opaque Projector(テレビジョン オペーク プロジェクター)」を略して「テロップ」と名付けられました。※1

【参考】Eyes Of A Generation…Television’s Living Historyでは、グレイ社のテロップ装置の画像を見ることができます。

その後の技術革新によって、装置としての「テロップ」は姿を消してしまいましたが、日本において この言葉は「映像内に挿入される文字」を指す用語として定着することになりました。

このブログにおける「テロップ」という言葉も、本来の機械装置のことではなく、動画に入れる文字情報の意味で使用しています。

「テロップ」以外にもこんな呼び方が…

映像内の文字を指す用語としては、他にも「字幕」や「スーパー」などがあります。使用する人・場面によって細かいニュアンスは異なるるものの、基本的には「テロップ」と同じものを指していると考えてよいでしょう。

文字を入れる場合を「テロップ」、写真・イラストを入れる場合を「スーパー」と呼んで区別するケースもあります。

※1:装置の名称に関しては「Television Opaque Projector(デジタル大辞泉)」のほかに「television opaque-card projector(日本大百科全書)」や「Television Optical Slide Projector(英語版Wiki)」と紹介している文献もあります。

1980年代まで:情報の「補足」がメイン

1980年代頃までのテロップは、基本的に「動画内の情報を補足するもの」に過ぎませんでした。

当時のテレビ番組でテロップ表示されていたのは、出演者の名前や、歌番組の歌詞、クイズの問題文などで、その使用場面はとても限られていました。

1990年代から:演出手法のひとつに

しかし、1990年代初め頃から、テレビのバラエティ番組を中心に テロップの演出的効果に注目が集まるようになります。テロップの用い方によって、動画をさらに盛り上げることができることに 制作者達が気づいたのです。

また同じころ「キャラクタージェネレーター」と呼ばれるテロップ作成装置が普及したことにより、従来は「白地のゴシック体に黒の縁取り」程度に過ぎなかった文字の装飾性が、一気に多様化します。

演出したい「意思」と、それを簡易に実現できる「技術(装飾)」が交わったことで、テロップ文化は一気に進化。制作者達は こぞって効果的な文言・デザイン・出し方を模索し、動画にはテロップが 溢れるようになっていきました。

2010年代から:多様な環境での視聴に対応

一方、2010年代後半からは、YouTubeをベースとした個人制作動画も 普及しはじめます。

ここでも、テロップを多用した動画が多数投稿されていますが、これには「制作者たちが テレビ番組を見本としたため」という理由の他に、YouTube独自の事情も関わっています。

YouTubeの場合、家屋内で見ることが前提のテレビとは異なり、ユーザの視聴環境・デバイスは多岐に渡ります。このため、例えば「電車内で 動画の音量を最小限にして視聴しているユーザー」なども想定する必要があり、極端な話、音量がゼロでもなんとなく何をやってるか分かるような工夫が求められます。

このため、結果的に テロップを字幕(文字多重放送)的な役割で活用する動画が多くなったと考えられます。

「テロップ」3つの役割

このように動画におけるテロップの役割は、時代とともに変化してきましたが、現在(2020年代)主流なテロップの使われ方としては、おおよそ以下の3つに分類することができます。

  1. 情報を「説明」する役割
  2. 動画を「演出(強調)」する役割
  3. 動画自体の「印象」を決定づける役割

【役割1】 情報を「説明」する

撮影した映像素材やナレーションだけでは伝わりにくい内容を説明する場面で、テロップが用いられます。

説明系テロップの役割としては、さらに細かく「補助・説明・解説」に分類することができますが、いずれも、視聴者が 動画の内容を理解するのを助ける働きがあります。

  • 補助:インタビュー動画で、録音状態が悪くて聞き取れない音声を字幕化する。話者の言い間違いを訂正する。話者が省略した内容を補足する など
  • 説明:人名・商品名・価格など 事実を伝えるもの。楽曲の作詞・作曲者。歌詞の表示 など
  • 解説:「専門用語」など一般的に知られていない言葉を説明するもの。話のポイントなどをまとめて内容の理解を助けるもの

【役割2】 動画を「演出」する

また、テロップは、動画をより魅力的にみせるための「演出」手段の一つとしても用いられます。

例えば、テレビのバラエティ番組などでお馴染みの「喋りテロップ(会話テロップ)」や「突っ込みテロップ」は、まさにこの演出的な使用の典型です。

テロップのデザインや出し方を工夫することで、音楽(BGM)や、効果音と同じように、視聴者の感情を刺激し、動画をより楽しく より華やかなものにしてくれます。

【役割3】 動画の「印象」を決定づける

「人が得ている情報の8割は視覚から」と よく言われます。これは「音声(聴覚)」と「映像(視覚)」を比較した場合、視覚に訴えるものの方が、圧倒的に人間の印象に残りやすいことを示しています。

このため「視覚」要素に属するテロップは、動画自体の印象を左右する重要な構成要素の一つです。

しかも、個人による動画制作が一般化した2010年代後半以降は、テロップの出来が、その動画の出来だけでなく、その制作者(出演者)に対する印象にも直結するようになってきました。

現在では、テロップのクオリティが、動画・出演者・制作者のブランディングにも繋がることを理解しておきましょう。

参考

テレビを変えた文字テロップ― 30 年の変遷に見る地上波番組の質的変化―:森川 俊生

【昭和のテロップは紙だった】紙のテロップとは?:もふもふ@手書き文字ブログ

バラエティ番組におけるテロップの役割に変化 「情報を補う」から「ツッコミ」に:中野ナガ(ORICON NEWS)

もはや定番化? テレビ番組の「テロップ」が90年代に爆増したワケ:星野正子

「テレビ美術」の成立と変容 – NHK(PDF)