この記事では、テロップ作成時に 最低限注意しておきたい5つのルールをまとめてみました。
- 「読めない」テロップはNG!
- 「下画を邪魔する」テロップはNG!
- 「テーマに合わない」テロップはNG!
- 「意味の通じない」テロップはNG!
- 「間違った情報」はNG!
1~3はテロップのデザインやレイアウト、表示方法に関する注意事項。4.5は文言の選択に関するNG事項です。詳しくみていきましょう。
1.「読めない」テロップはNG!
テロップは、そもそも「視聴者がきちんと読める(認識できる)」ものでなければ意味がありません。以下は、読めない/読みにくいテロップでよくみかける事例です。
文字と下画の明度差が少ない
テロップと下画の「明るさ」が近いと、両者が溶け合ってしまい、文字は読みにくくなります。
この場合は、テロップを 下画とは対照的な「明るさ(明度)」の色に変えてあげます。
例えば、背景が暗めの場合は、テロップには明るい色を選択。背景が明るい場合は、テロップには暗い色を選ぶと、文字の可読性(読みやすさ)があがります。
補色の関係にあっても「いわゆる緑」と「いわゆる赤」は明度が近いため、ちらつきを起こすなど可読性は低くなりがちです(リープマン効果)。
緑と赤を使う場合は上図のように白のエッジを入れるか、「暗緑色(暗めの緑)」と「明るめの赤」のように 明度差をつけてあげましょう。
カメラが動いたり、カットが切り替わったりして、下画の明るさが変化する場合は、文字にエッジやドロップシャドウ、座布団などを加えて 可読性をあげます。
この場合も「文字色とエッジの色」「文字色と座布団の色」は 明度差がつくものを選択します。
また、下画に文字が映りこんでいたり、細かい模様が入っていたりすると、視点がブレてしまって テロップが読みづらくなるケースがあります。こうした場合は、テロップに座布団を敷くか、下画の方に 軽くブラーをかけてあげると可読性が向上します。
文字のサイズが適切でない
文字のサイズは、大きすぎても 小さすぎても読みにくくなります。適切なサイズ感を心がけましょう。
しかし「適切なサイズ感」は、最終的に表示されるデバイスによって異なるため、一概の正解値はありません。
家庭用のテレビで視聴することが前提のテレビ番組の場合、サイドスーパーなどで小さめの文字を使用しても それほど問題ににはなりません。
しかし、スマホを始めとした小さなデバイスでの視聴が多いYouTube動画の場合は、テレビよりも文字サイズをやや大きめに設定する必要があります。
長体・平体は80%までにおさめる!
文字数が多い場合などには、文字を横につぶしたり(長体)、縦に平べったくしたり(平体)することで、スペースを稼ぐことがあります。しかしその場合、過度な加工は文字の可読性を落とすため、最大でも「80%」程度に抑えるようにしましょう。
文字量(情報量)が多すぎる
人間が一度に処理できる情報量には限界があるため、文字数は可能な限り減らすようにします。
テロップは2行以内に収めるようにしましょう。1行の文字数は16文字程度が目安です。文字量が多いと、人間の処理が追い付かず、極端に可読性が落ちてしまいます。
情報を「文字」で読ませるのではなく、記号・ピクトグラムを使って「アイコン化」することで、同じ内容をより読みやすくすることができます。
例えば「四月二十五日 土曜日」と書くよりも「4/25(土)」とした方が、人は内容を素早く理解することができます。これは日付を「読ませる」形式から、「見せる」形式に変換したことによる効果です。
脳内の情報処理を軽減することができるため、情報のアイコン化は テロップ作成の重要なテクニックのひとつといえます。
表示時間が短すぎる
テロップは「長めに表示」を意識しましょう。「1秒間に4文字以内」がひとつの目安です。
解説系の動画など 文字量が多くなる際は、テロップが表示されてから「声に出して2回読める」くらいの時間をとるようにしましょう。
テロップ作成者は、動画のどのタイミングでどの文言が入るかをあらかじめ把握しているため、一般視聴者よりも読む時間が早くなる傾向があります。作成者は、視聴者の理解は 自分よりも1.5~2倍程度 時間がかかるのだと認識しておきましょう。
また「しゃべりテロップ(会話テロップ)」のように、文字が音声とシンクロしつつ表示される場合、リアルに会話を区切って表示させると忙しく感じることが多いため、2行分を時間差で表示してあげると、読みやすくなります。
2.「下画を邪魔する」テロップはNG!
テロップを配置する場所(レイアウト)が良くないと、動画全体の理解を妨げる可能性があります。
「見たいポイント」に被せない!
その動画の中心となるものをテロップが隠してしまわないように注意しましょう。
例えば、野菜炒めを作る料理の動画であれば、視聴者の目線は 料理している人の手元・フライパンにいきます。この時、フライパン上にテロップを置いてしまうと、視聴者は「見たいのに見れない!」と ストレスを感じます。
人の「顔」に被せない!
また、人間は本能的に「他人の目を見てしまう」習性をもっています(シミュラクラ現象)。このため テロップが出演者の顔に被ってしまうと ストレスを感じます。特に理由がない限り、テロップは 出演者の顔にかからないように注意します。
3.「テーマに合わない」テロップはNG!
テロップは、動画の印象を左右する重要な構成要素です。このため、動画のテーマと合っていないデザインを選択してしまうと、動画自体の評価を大きく下げてしまうことになります。
テーマに合ったデザインを!
例えば、バラエティ動画に求められるテロップと、おしゃれ系のメイク動画などに求められるテロップのデザインは異なります。動画のテーマに沿ったデザインを心がけましょう。
- おしゃれ系:フォント:細め、装飾:質素 基本は文字色のみで Dシャドウ、座布団を活用 など
- 楽しい系:フォント:太目 装飾:華美 エッジ・立体化・Dシャドウ・座布団を活用 など
テロップのデザインは、自分の「好み」ではなく「動画のテーマ」に合わせて作成する必要があります。
動画の「喜・怒・哀・楽」に合わせたテロップを!
テロップを構成する「フォント」や「色」には、それぞれ、同時代の視聴者たちに漠然と共有されているイメージがあります。
テロップを作成する際には、こうしたイメージから外れないように注意しましょう。
- 明朝体:大人っぽい、真面目、優雅、上品、知的 など
- ゴシック体:安定的、カジュアル、面白い、楽しい、親近感がある、目立つ など
- 丸ゴシック体:やさしい、ソフト、ワクワクする など
- 赤:情熱的なイメージ
- 青:クールなイメージ
- 緑:若々しいイメージ
- 金:高級なイメージ など
4.「意味の通じない」テロップはNG!
デザイン的に どれだけ読みやすいテロップが作れたとしても、その内容を視聴者が理解できなければ意味がありません。
テロップで用いる文言・文章は、視聴者の理解レベルに合わせて作成する必要があります。
動画のターゲットを把握しておく
YouTube向けに動画を作成する場合は、その動画がターゲットにしている視聴者のペルソナ(人物像)を明確化しましょう。
不特定多数に一方的に送信されるテレビの場合、基本的には「子供からお年寄りまで 誰が見ても分かりやすい内容・表現」を大前提として制作されています。
一方 YouTubeの場合は、チャンネルごとに特定の嗜好のユーザが先鋭化する傾向があるため、必ずしも「誰が見ても分かりやすい」内容である必要はありません。
YouTube動画の場合は、こうした特徴に合わせて、視聴者の「年齢・性別・居住地・職業・年収・家族構成」などを細かく想定し、テロップの文言を考える際には「彼/彼女なら、この表現が理解できるだろうか?」を考える必要があります。
「専門用語」の使用には注意する!
例えば、同じ動画編集者向けの番組であっても「動画初心者におすすめの編集アプリ」と「PremierePro 時短テクニック」とでは、視聴者のレベルは異なります。
「レガシータイトル」という用語を使う場合、前者の動画には「Adobe社の編集アプリPremiereProに付属するテロップ作成ソフト」といった解説が必要になるでしょう。
しかし、PremiereProユーザーであることを前提としている後者の動画であれば、視聴者はある程度PremiereProを使用しているユーザーと想定できるため、いちいち「レガシータイトル」を説明する必要もありません。
自分が何気なく使用している言葉が、動画の視聴者に理解できる内容かどうか、常に意識する必要があります。
5.「間違った情報」はNG!
さいごに 最も重要なポイントがこれ。テロップの情報自体に誤りがないか 確認しましょう。
誤字・脱字は禁物!
出演者の名前、地名、価格表記など、テロップの文言に間違いがないか確認しましょう。
誤字・脱字は、テロップ作成者が見直してもなかなか発見できないケースが多いため、可能であれば数人で確認することをおすすめします。
表記のルールを作ろう!
動画内で猫のことを伝える際に、カットごとに「猫」「ねこ」「ネコ」のように表記が異なると、視聴者は読みづらさを感じます。
同じ番組・チャンネル内の動画において、語句・表記の用い方に関するルールを決め、表記を統一するように心がけましょう。
同じ意味を持つ言葉に対して 表記がいくつか混在している状態を「表記ゆれ」と呼び、以下のような事例があります。
- 漢字・かな・カナのゆれ:「ねこ/猫/ネコ」など
- カタカナ語ゆれ:「ダイアモンド/ダイヤモンド」「ベッド/ベット」「サーバー/サーバ」など
- 送り仮名のゆれ:「引っ越・引越・引っ越し・引越し」など
- 固有名詞:「Google/グーグル」「Yahoo/ヤフー」など
- 数字の表記:「5年」「五年」など
- 省略形:「スマートフォン/スマホ」「インターネット/ネット」など
表記ルールの作成にあたっては『記者ハンドブック(共同通信社刊)』や『NHK漢字表記辞典(NHK出版刊)』が参考になります。