テロップの「サイズ」
テロップの文字サイズは、想定される視聴デバイスのなかで「最も小さい表示画面」を基準に考えます。
例えば、YouTube動画の場合であれば、スマホから家庭用テレビまで、様々な環境での視聴が考えられますが、文字サイズの目安としては「スマホで見た際に 文字が判読できる大きさ」がひとつの目安となります。
一般的なテレビ番組は、家庭用テレビ(スマホよりもかなり大きい)で見られることを前提に制作されているため、サイドスーパーなどに かなり小さな文字サイズが使われています。YouTube動画でこれをマネしてしまうと、読めない文字が出てくる恐れがあるため注意が必要です。
また、ひとくちにスマホといっても、画面サイズは機種ごとに大きく異なります。自分なりの最小画面の基準を持つようにしましょう。
私の場合は、YouTube動画を作成する際「iPhone6,7,8,SE2」で採用された 4.7inch(750 x 1,334 px)を「最小の画面」基準としています。
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テロップの「表示時間」と「文字数」
表示時間は「4文字:1秒 + α」が目安
一般的に テロップ表示時間の目安は 「4文字:1秒」と言われます。 ただし これは洋画字幕のように「字幕が表示される場所・タイミング」が比較的 一定な映像の場合の値です。
不特定のタイミングで、不特定の位置に、不特定の意味合い(コメントフォロー、煽り、説明など)で表示される動画テロップの場合は、これよりもやや長め(4文字:1秒 + α)に表示してあげます。
一方、次のような場合は、「4文字:1秒」より 少し短くしても問題ありません。
- 「なんでやねん」「こんにちは」のように 馴染みのある言葉の場合(コメントフォローなど)
- 「読売ジャイアンツ」「ソフトバンクグループ株式会社」のように、文字が一つの塊として認識できる場合
文字数は「1行:16文字(2行以内)」が目安
テロップの文字数が多すぎるのもよくありません。一般に「1行 16文字 程度で 2行以内に収める」のが目安とされます。
これ以上の文字数になると、動画を見ているというよりは「文章を読んでいる」印象になってしまうため、1画面内に表示する文字数が「30~35文字」程度に収まるように、文章を推敲する必要があります。
作者の感覚より「1.5倍長い」表示を心がける
もちろん 以上の数値は、あくまで目安であり、最適な文字数・表示時間は、動画の内容によって大きく異なります。最終的には、テロップ作成者が 目視して視聴者がちゃんと読めるかどうか判断しましょう。
この時 注意したいのは、一般ユーザは、動画のどこに、どの文言が入るか 知らない状態で動画を視聴するという点です。
テロップの作成者は、どのタイミングでテロップが入るか あらかじめ把握しています。このため 一般視聴者よりも 読みこみにかかる時間が早くなる傾向があります。作成者は、視聴者の理解は 自分よりも1.5~2倍程度 時間がかかるのだと認識しておきましょう。
テロップを「出す/消す」タイミング
テロップを 出す/消すタイミングは、テロップの種類や動画の内容によって異なります。ここでは 以下の2種のテロップに関して、私の個人的な事例を紹介しておきます。
- 「フォロー」テロップ:出演者の「会話」を文字化し、音声と同時にテロップ表示するもの
- 「説明」テロップ:動画の内容を補足する情報。説明テロップ、人名・地名テロップなど
「コメントフォロー」は 音よりも少し先行させる
エンタメ系動画のコメントフォロー(しゃべりテロップ)など、音声と文字を同期させながらテンポよく見せたい場面では、音よりもテロップを少し先行させてあげるといい感じになります。
本来であれば、音声の聞こえ始め(波形の頭)に、テロップを合わせれば良いように思いますが、こうすると、視聴者側には「テロップがやや遅く」感じられる傾向にあります。
インタビュー映像などのように落ち着いたテンポで進行する動画の場合は、必ずしもテロップを先行させる必要はありません。
これは、人間の脳が「光」と「音」を知覚する際の、反応時間の違いが原因のひとつと考えられます。
人間の脳は「視覚」の刺激よりも、「聴覚」の刺激に素早く反応するようにできているためです(視覚:170ms/聴覚:130ms)。
また、テロップは、視聴者が予期しないタイミングで表示されるのが一般的です。このため、一連で耳に入ってくる音声とは異なり、テロップの場合は、まず「何かが表示された → 文字だ」と認識する工程が必要になります。
このため、音声の聞こえ始め(波形の頭)と テロップを合わせてしまうと、視聴者は テロップ側の表示を 遅く感じがちです。
テロップを先行させる度合いについて、一律の正解はありません。
私の場合は、話し手の間合いや、文言(口の開きと音の聞こえ方)、動画全体のテンポに応じて「1~4F」くらいの幅で その都度 調整を行っています。経験上、機械的に「波形の〇F前」と固定しても、あまりうまくいきません。
また、テロップがカットインするのか、エフェクトを伴うのかによっても タイミングは変わりますので、その都度「よいタイミング」を考える必要があります。
カット替わりして、キャストがしゃべりだす場面では、テロップを音声に合わせてカットイン表示すると、映像がうるさくなってしまいます(一度に処理する視覚情報が多くなってしまう)。
カット替わりでコメントフォローする場合は、カット頭からテロップを表示しておくのがおすすめです。この場合、言葉までに 多少間があったとしても それほど違和感は感じないはずです。※もちろん おかしかったら修正します
テロップを消すタイミングは、話終わりから1拍 遅らせたあたりが適当です。言葉が続く場合は 次の言葉の出だしまで表示させても大きな違和感にはなりにくいです。
ただし、フェードアウトする場合など、消えるタイミングが カット替わりにかかる時は カット内で納めるのが無難。
一方、テロップが状況説明的な要素を含むケースでは、話終わり後、カットをまたぐ形で表示しても問題ありません(例:今日はおひとりなんですね など)。
「説明」テロップは 話題を振った後で表示
説明テロップのように、動画中の内容を補足する情報を表示する場合は、視聴者に その話題(言葉)を 提示した後で表示するのが基本です。
例えば、キャストが 以下のように話している場面で「芥川龍之介」についての説明を入れるとした場合。A~C のどこからテロップを表示すべきでしょうか?
- 【キャストのセリフ】ドッペルゲンガーの体験者といえば、(A)日本では(B)芥川龍之介が有名です。(C)彼は、生涯で なんと2度もドッペルゲンガーを体験しており、ドッペルゲンガーを題材にした小説も執筆しているんですよ。
- 【説明テロップ】「芥川龍之介(1892-1927)日本の小説家 『藪の中』『地獄変』など短編小説の名手として知られる」
説明テロップは、それが「話の内容を補足する情報であること」を 視聴者側が理解できなければいけません。
このため(A)は NGです。「芥川龍之介」の話題が出る前に「芥川龍之介」の説明が出てしまうと、視聴者は「このテロップは何?」と混乱してしまいます。もちろんそのあとすぐに 「芥川龍之介」の話題がでるので、事後的に意味合いは理解できるでしょうが、そこで生じた「違和感」は動画の印象を悪くしてしまいます。
(B)は「芥川龍之介」の話題が出るのと同時にテロップを出すパターンです。尺が短い場合などは、こちらでも悪くはないと思います。ただ、音声と同時に 文字情報を処理する必要があるため、視聴者に やや忙しく感じられてしまう心配があります。
個人的には(C)あたりから 表示させるのがおすすめです。「芥川龍之介」の話題がでたことを 視聴者が認識した後なので、スムーズに内容が頭に入ります。「芥川龍之介の話題がでた → その人物に対する補足説明だな」という視聴者の心の流れを作ってあげることが大事です。
参考文献・WEB
・映像と音の同期―「動画先行の原則」の根拠と応用:桑原 圭裕
・11.テレビ会議に関わる人間要因(ヒューマン・ファクタ)【映像と音声の相互関係】
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